要旨



 [緒言]理療教育課程に在籍する中途視覚障害者(以下、中視者とする)においては、使用文字を含む学習手段の確立が早急な課題となる。中視者の中には、墨字や点字という「文字」を使用しての学習に加え、授業の録音や録音教材による学習を試みる者もいる。しかし録音教材には、高価格の問題、助成方法に関する問題などがある。今回の調査の目的は、中視者の音声による学習の実態および学校・施設側の現状や対応を把握し、これらの問題の解決策を考える際の材料となる数値化されたデータを得ることである。
 [方法]郵送による質問紙法で事前調査、本調査1、本調査2を行った。事前調査の対象は盲学校、視覚障害者更生施設、大学の理療教育課程主任70名とし、中視者生徒・入所者の数を把握した。本調査1の対象は理療教育課程主任64名、本調査2の対象は中視者生徒・入所者1353名とした。
 [結果]本調査1では57名の理療教育課程主任から回答が得られ、回収率は89.0%であり、本調査2では1005名の中視者から回答が得られ、回収率は74.3%であった。理療教育課程在籍者に占める中視者の割合は74.8%である。入学時点で確実な使用文字を持たなかった人が9.9%存在している。34.3%の人が授業を録音している。23.0%の人が録音教材を使用している。録音教材を使用している、もしくは使用したことがある人の49.8%は、入手が困難だと感じており、80.6%は試験に役立つ、71.8%は学習意欲が高まる、67.4%は録音教材がないと困ると答えている。また理療教育課程主任の74.6%が、録音教材は生徒・入所者にとって利用価値があると答えている。一方、学校・施設での録音教科書の保有状況には大きな格差がある。
 [考察]結果から、中視者の学習手段は多様化しており、周囲の対応は今まさに過渡期であることが示された。録音物は様々な理由で学習に利用されており、中視者が学習手段を確立するうえで重要な選択肢の一つと言える。しかし、実際に入手し活用することが困難な状況も存在しており、学校・施設が録音物の利用者へのサポート体制を拡充させることは、理療教育において今後避けて通れない課題である。今回の調査結果をもとに、各学校・施設において録音物の使用状況や環境を見つめ直し、状況に合わせた適切な対応および学習者をとりまく環境の改善が行われていくことが望まれる。
 注1)現在、中途視覚障害者という用語について明確に定義されたものはない。本研究では中途視覚障害者を「理療教育課程以前に盲学校在籍経験のないもの」と定義して調査を行った。
 注2)本研究でいう録音教材とは学習上で使用する教科書・参考書の録音とし、その形態は問わないこととする。

キーワード:理療教育 中途視覚障害者 録音教材 録音機器 調査



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